ぼくは,この5,6年間,
島の緑を削る採石場に反対する運動を行ってきた。
多島美の瀬戸内海の景観と環境を守ろうとするものである。
「能美島南海岸環境保全連絡会」は,
そのための住民組織であり,現在,ぼくが代表を務めている。

さる11日(日),
能美島南海岸にある「海の家」にて,その総会が開かれ,
この間の運動の勝利[パンチ]を,住民とともに確認することができた
ので,その報告を行う。

能美島(江田島市)の南海岸の西側では,
約50年前から採石事業が行われており,次第に規模が大きくなり,
山の緑は消え,茶色の山肌が大きくザックリとむき出しとなり,
島は無惨な光景をさらすこととなった。
採石場は,住民が住む南海岸の中央部に接近してきていた
(約500m)。
そのため,
採石工事に伴う砂じん,震動,騒音が住民に降りかかっていた。
南海岸中央部は,景色も良く,広島市や呉市から移住してきた人,
また,別荘を建てた人などがあり,家の数は約25軒で,
別荘地帯となっている。当事務所の「海の家」もその一つだ。

そうしたなか,従来からの採石事業に加えて,
同別荘地の対面の山を新たに採石場として削る計画が
持ち上がった。同別荘地から約100m~200mと近い。
平成14年末のことである。
住民たちは,業者に中止を申し入れ,行政にも陳情したが,
業者は,聞く耳を持たなかった。
そこで,住民たちは,
平成17年5月「能美島南海岸環境保全連絡会」を結成し,
反対運動を行うことにした。
中国新聞記事

平成17年9月,広島県公害審査会に対し,
採石工事を中止するように,調停を申請した。
業者が強行姿勢を崩さないので,
平成19年2月には,広島地方裁判所に採石工事禁止仮処分を
申し立てた。
同年7月,広島地方裁判所は同仮処分申立を却下。
住民側は即時抗告。
工事が開始された場合に想定される損害を立証する数値的な
証拠提出が困難な中,
業者の岩石採取認可申請書記載の岩石破壊に使う爆薬の量から、
1回の発破によって生じる住宅への振動が計算できることを発見。
業者による同申請書のとおり行うと,住宅に対し,
軽微な地震以上の振動が、日常的に発生することを証明した。
業者の同申請書のデタラメサが証明され、
同業者は、当初提出していた採石採取認可申請書を訂正せざる
を得なかった。
しかし,結果は,
平成20年12月,当方の抗告棄却で,敗訴。
なお,公害調停も,平成20年3月,合意する見込みがないとして,
打ち切り。

万事休すかと思いきや,長い裁判の間(抗告審は約1年半続いた)
に,採石業者を不況がおそい,また,島の緑を守ろうという世論が
高まり,業者は採石工事を始められないままでいた。
また,従来からの採石事業も一気に終局の方向に向かった。
ただ,いつでも採石工事を始めることができる状態が続いていた。

それが,この6月
新事業者は,設置していた砂の運び出し用の鉄製大型桟橋の
撤去を行った。そして,
広島県も,新事業者に対し,採石採取「不認可」の決定を下した。
新たな採石事業は,完全に中止となったのである。
住民たちは,今後も採石事業再開への警戒を続けるが,
ひとまず,勝利の確認を高らかに行ったのだ[グッド(上向き矢印)]

参考までに,平成19年3月14日に広島弁護士会が広島県知事に
送付した
瀬戸内海の島を削る採石事業(島砂採取)を原則禁止する条例制定を求める意見書
をご覧ください。

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